自信を持って言おう。鎌倉で1番美しい場所は、鏑木清方記念美術館 だ。
鏑木清方は、明治から昭和期にかけての美人画で有名な日本画家。
鏑木清方記念美術館は、その邸宅跡に建つ、和風建築の小さな美術館だ。
鎌倉駅から徒歩5分ほど。小町通りから少し入った場所にある。
新しい展示が始まっていた。『春を待つー清方が描いた新春ー』(12/2〜令和6年1/8)
今回の入館料は300円だった。催し物によって変動する。
清方の描く美人画は、本当に美人だ。
凛として涼しげで淡く静かですらりとしてしっとりしている。肌はぬけるように白く、唇はちゅんと小さい。瞳は物憂げで遠くを見つめるような表情をしている。
1度に見れる作品は多くないけれど、わりと短いスパンで展示が替わるので、鎌倉に行くとちょくちょく寄っている。
お手軽な料金でさらりと入れて、美しい日本画を眺めて心にそよ風がよぎるような心地良さを味わえる。
絵を鑑賞した後は、小さな庭に面した休憩コーナーのイスに座ってぼーっとする。
完璧に吹き上げられたガラス窓から、ぽっかりと陽がたまった庭を眺めてぼーっとする。
植えられた木々がいくつか赤く色づいていた。
この場所が「鎌倉で1番美しい」所以は、絵の展示だけではなくこの建物の空間全てにある。
鏑木清方記念美術館の庭は、私がこの世で1番好きな庭だ。
小さいし、なんてことない庭かもしれない。
でも枝先1本、葉っぱ1枚とっても美しいのだ。
広けりゃいいってもんじゃない。色鮮やかならいいってもんでもない。
ついでに言えば、鏑木清方記念美術館のトイレもこの世で1番好きなトイレだ。
トイレに関しては行く先々でかなり注意深く見てる方だと思う。設備じゃない。新しければいいってもんでもない。
庭もトイレも、この場所をどこよりも美しく保とう、という誰かの気持ちが絶対にものをいう。
挿絵も多く手がけた清方の絵は、とがっていない。見ていて、わあ、きれいだなあ、と素直に思う。
そしてこの美術館全体が、絵の中の美しさがそのまま形になったように空気がきれいだ。
美しいものに触れたくてここに来て、体の中を洗浄してもらったような気分になる。
だから、鎌倉に行く度に寄りたくなる。
鏑木清方記念美術館が鎌倉にあることが、とても嬉しい。